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【開催報告】スポーツの力~次代のダイバーシティ/多文化共生を考える~#ProudToPlay


シンポジウム参加者の希望者による集合写真

2016年3月12日(土)、LGBT(性的マイノリティ)の社会課題解決に向け、スポーツの世界で取り組まれるLGBT支援の事例を紹介しながら、2020年の東京五輪を目前とする日本においてスポーツを通じた街創りをどの様に計画していくべきかを考えるシンポジウムを浜松市鴨江アートセンターにて㈳静岡県民球団とSeeds of Future Caféとの共催で開催致しました。

(※LGBTとは、L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー。順番に、女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、生まれたときに法律的/社会的に割り当てられた性別とは異なる性別を生きる人の総称。)

シンポジウム冒頭には鈴木康友 浜松市長もご挨拶にご登場され、未来に向けてダイバーシティ/多文化共生の在り方について考えることの大切さについてメッセージをいただきました。

二部構成のシンポジウムとなり、第一部では特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ代表の村木 真紀氏がご講演され、第二部では、浜松地域のソーシャルセクターで活躍されている認定NPO法人エキゾチッククラブ理事長の鈴木恵子 氏と一般社団法人グローバル人財サポート浜松代表理事の堀永乃 氏にもご同席いただいてのダイアローグ・セッションを実施致しました。

参加者には、人権啓発センターやスポーツ振興課等の行政職員の方々の他、教育機関のスポーツ指導者やスポーツビジネスに携わっている方等、30名余りの方々にご出席いただきました。

全国的も稀にみる先進的な試みであると市長からも評され、盛況のもと開催されました。

鈴木康友市長による冒頭挨拶

▼スポーツの力・次代のダイバーシティ/多文化共生を考える。

http://lgbt-sport.peatix.com/

■独立行政法人国際協力機構(JICA)、浜松市 後援■

■LGBT×スポーツ 世界で今何が起きているのか?

LGBT当事者は、学校等での“いじめ”の対象になりやすいと村木氏は話す。LGBT当事者の7割は、いじめにあったことがあるという調査結果もでていると話し、村木氏自身も性に関する悩みを相談できないことで地元コミュニティにおいて疎外感を抱き、そのことが、ご出身の茨城から京都の大学への進学を決めた一因にあったことを実体験として明かした。LGBT当事者が抱える悩みは、進学や就職など身近なライフイベントで問題がおこるのだと村木氏は解説する。

そしてLGBTの社会的困難な場面は、思春期を過ぎて成人から老齢期にかけても起こるのだと村木氏は続ける。怪我や病気等もしもの時の法的・社会的保障や、有事の際にパートナーに遺す財産のこと、老後生活の不安のこと等など、多様な瞬間に不自由な場面に遭遇するという。

最新の調査結果では、日本人口の5%~7%、20人に一人以上はLGBT当事者がいることがわかってきた。LGBT当事者の多くは、これらの問題・課題を親にも友人にも共有できずに悩み続けながら、暮らしているのだと村木氏は訴えた。

LGBTがカミングアウト出来ないでいることや、LGBTが社会で生き辛いと感じていること、“スポーツ”は、それらの問題を解決する糸口に成れるのではないか、とスポーツを通じたLGBT支援策やLGBT向け施設の国内外の事例を持って村木氏は解説した。

五輪関係の事例では、ロシアの反同性愛法に基づくLGBTに対する人権侵害の問題が2014年ソチオリンピックでは国際問題にまで発展し世界中で抗議デモが起こり、五輪憲章の第6章も更改されたことを紹介。

また、LGBTのアスリート・関係者・観客のための特別なスペース“PRIDE HOUSE”(http://www.pridehouseinternational.org/)が2010年のバンクーバーや2012年のロンドンでも設けられていたことを共有し、2020年の東京五輪に向けて日本でもLGBTに対する支援策や施設の検討の必要性を具体的に紹介した。

そして、競泳のイアン・ソープ氏らLGBTのアスリート達がカミングアウトすることによる効果等から、LGBT当事者が抱える社会課題がスポーツを通じて一般社会に共有され、その課題が解決に向けて前向きに議論されていく潮流を、スポーツは生むことができるのではないかと村木氏は話す。

現在、アライ、もしくはストレートアライ(Straight ally)と呼ばれる、男女同権やLGBTへ支持・理解を示す(LGBT当事者ではない)人の存在が国内外で増加しており、米国スポーツ界では個人だけではなくYou Can Play Project(http://youcanplayproject.org/)の様なコミュニティ活動にまで拡大してきているという。国内においても、元プロ陸上選手の為末大 氏がアライとして活動されているといった例を紹介した。

多文化共生の街創りを目指し、沢山のグローバル企業が籍を置く“浜松”は、LGBT(を理解・支持する)先進都市になれるポテンシャルがあると村木氏は話す。

国内上場会社(全国4証券取引所)の株主保有比率において、外国法人等が保有する比率が年々増加し、現在までに30%以上となってきている昨今、海外(投資家等)からの要求や評価に応える経営体制を築く必要性が高まっていることは明らかである。

特に近年、ジェンダー平等と女性のエンパワーメント等、LGBTを含めた人権の問題は常に注目のトピックであると言える。村木氏が講演の中で紹介したHuman Rights Campaign財団(HRC)という米国の人権団体が発表している“Corporate Equality Index(職場の(人権上の)公平性を示す企業平等指数(CEI))”レポートもその指標の一つだ。

民間企業は従来、経済性ばかりが求められてきた。しかしながら社会変動(social change)が起こり、現在は社会性という指標も求められている。村木氏がコメントする『浜松は、LGBT先進都市になれるのではないか⁉』という期待は、その時代の潮流と一致する、浜松地元企業が変われば、そこで働く人々の意識が変わり、市民の意識が変われば、行政も変わってくるという理屈だ。

2020年と、その先に向けてLGBTの権利擁護の法制化など、社会を変える推進⼒にスポーツを活かしてほしいと、村木氏は第一部の講演を締めくくった。

■LGBT×スポーツという観点

鈴木恵子 氏 認定NPO法人魅惑的倶楽部(エキゾチッククラブ)理事長

『社会には、様々なマイノリティが存在します。私たちNPO法人は、誰もが普通に暮らせる、心のユニバーサルデザインの社会を目指しています。

セクシャルマイノリティやHIVに関わる事業に取り組んできて一番感じるのは、HIVやLGBTへの理解や差別、偏見がなくならなければ、知的障がいのある人への差別、偏見もなくならないということです。

本日のテーマの“スポーツ”という切り口は、身近にいる多様な人への思いやりや弱者に優しい社会、誰にも平等な世界を築くために、社会課題として問うことは新鮮なアプローチだと思います。』

堀永乃 氏 一般社団法人グローバル人財サポート浜松代表理事

『競泳の世界において、アジア選手が勝つと、欧米側によりアジア選手が勝てなくなるようにルールを変更するといったようなことが起きると聞いたことがあります。

フェアネスが根底にある筈の“スポーツ”の世界においても、一般的な差別や偏見と根本的に共通するところがスポーツの世界にもあるのだと驚きました。

スポーツマンシップに反する姿勢だけに、(差別や偏見を)より鮮明に感じます。これからの地域をより魅力的にするには、そうした偏見や差別的な行為ではなく、LGBT当事者も在日外国人も、人の多様性を活かして、地域を強くしていく必要があると思います。』

村木真紀 氏 特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ代表

『LGBT当事者がスポーツで活躍することによって、自己肯定感や自尊心を育む機会がLGBT当事者に増えることが期待されます。また、チームスポーツへ参加することで、地域社会やコミュニティとの繋がりを持てることも重要な効果であると考えられます。

LGBT当事者の方々は強い孤独感を感じながら生きています。その意味では、この社会で生活できるだけでもサバイバー(逆境に負けない人)であると言えます。

そんなサバイバーを励まし、勇気づける機会やキッカケをスポーツは創ってくれるのです。』

■誰も置き去りにしない(No One Left Behind)社会の実現に向けて

2015年9月25日国連総会で採択され、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」という、全ての人間を中心におくビジョンがあります。

SDGsの目標年は2030年と設定されており、地球全体で貧困を克服した上で、さらに世界の生活と生産、環境の場で持続可能なサイクルを作ることや、生物多様性保全、森林・海洋の保護、地球温暖化防止、再生可能エネルギーを含むエネルギーの効率的利用、持続可能な生産と消費の流れを創ること等も目標に含まれています。

国連は、この目標を達成するうえで、スポーツの持つ重要な役割に注目しています。

国連開発と平和のためのスポーツ事務局(UNOSDP)では、4月6日の「開発と平和の­ためのスポーツの国際デー(International Day of Sport for Development and Peace:IDSDP)」を記念しSDGsの認識を高めるために、ソーシャルメディア・キャンペーンを開始しています。

そしてまた、本テーマであるLGBTについても、すべての項目を「分野横断的に」貫いているテーマとし、『誰も置き去りにしない(No One Left Behind)』というSDGsの公約に含まれていることについて国連の潘 基文事務総長が発信しています。

LGBT(性的少数者)を包括した社会、誰もが平等に生きる社会、そんな社会の実現を目指すことこそグローバルの潮流である、ということを本シンポジウムでは触れさせていただきました。

##### 【Global trends】Source:UNOSDP Sport has proven to be a cost-effective and flexible tool in promoting peace and development objectives. Since the inception of the MDGs in 2000, sport has played a vital role in enhancing each of the eight goals, a fact which has been recognized in numerous Resolutions of the General Assembly. In the Declaration of the 2030 Agenda for Sustainable Development sport’s role for social progress is further acknowledged: "Sport is also an important enabler of sustainable development. We recognize the growing contribution of sport to the realization of development and peace in its promotion of tolerance and respect and the contributions it makes to the empowerment of women and of young people, individuals and communities as well as to health, education and social inclusion objectives."

Due to its vast reach, unparalleled popularity and foundation of positive values, sport is ideally positioned to contribute towards the United Nations’ objectives for development and peace. To raise awareness of this potential, 6 April was declared as the International Day of Sport for Development and Peace (IDSDP) by the UN General Assembly. The adoption of this Day signifies the increasing recognition by the United Nations of the positive influence that sport can have on the advancement of human rights, and social and economic development.

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